痔は肛門部周辺の静脈が圧迫され血液の流れが滞ることによって発生する疾患の総称です。
大きく分けると「内痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3タイプがあります。
痔の症状によってはお薬だけで治ることも多いので「もしかしたら?」と少しでも不安に思ったらぜひ専門医での診察と治療をすることをおすすめします。
痔核は肛門疾患のなかでも最も多い症状で、一般的に「痔」というとたいていこの痔核のことを指します。
便秘で長時間いきむ習慣がある人や、力仕事が多い人、また長時間座る仕事の人などに痔核は起こりやすいです。
Ⅰ度 ジオン治療可能 |
出血のみで脱出しない。 |
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Ⅱ度 ジオン治療可能 |
排便時には脱出するが自然に肛門内に戻る。 |
Ⅲ度 ジオン治療可能 |
排便時には脱出すると自然に戻らず指などで 押し込まなければならない。 |
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Ⅳ度 ジオン治療不可 |
常に肛門の外に出たままの状態。 |
内痔核(いぼ痔)の手術が必要になります。
当院では日帰り手術を行っております。
痔ろうとは、肛門と皮膚の間にできる「トンネル」のことをいいます。
痔ろうの症状には、「腫れ」「痛み」「膿が出る」などがあります。
Ⅰ度 |
皮膚の浅い所を這うタイプで切れ痔に合併することが多い。 |
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Ⅱ度 |
皮膚の浅い所を這うタイプで切れ痔に合併することが多い。 |
Ⅲ度 | 肛門の後ろに痔ろうの入り口と、膿の溜まりのある複雑なタイプ。痔ろうの約3割をしめる。 |
Ⅳ度 | ほとんどないタイプ。 |
痔ろうに対しては「シートン法」を原則としています。症状が軽ければ、痔ろうを開いて治しますが、複雑な痔ろうに対しては弾力のあるゴムを使用します。
痔ろうは完治までには多少時間はかかりますが、必ず治ります。また、結核性の痔ろうの方は、3,000人に一人くらいの割合です。
痔ろうになった場合は、薬では治りません。
手術が唯一の治療法といえます。
裂肛は便秘や下痢などで肛門に無理な負担がかかることで起こる場合があります。
裂肛を予防するには、便通を良好に保って肛門に無理な負担がかからないようにする必要があります。
急性裂肛 | 排便時に痛みや出血をともなう。 | 三分の二以上の方は坐薬や軟膏、それに便秘も原因なので下剤も使った保存的療法で治ります。 ただ、下剤は必要最小限にとどめ、便は少し形のある程度の硬さにして、徐々に下剤をやめていきます。 |
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慢性裂肛 | 排便時に痛みや出血をともなう。 慢性化すると肛門が狭くなる。 |
肛門が狭くなっている時は、手術で広げます。 |
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いつも自分の排便状態に気を配ることが大切です。
「便の固さは?」「色は?」「血が出ていないか?」など、変わったことがあったら早めに専門医の診察を受けてください。
症状が進行していなければ、痔の手術をしないで治療することも多いです。
また、出血はガンやその他の内臓疾患疑いの場合もあるので、大腸の検査を受けられることをお勧めします。
温水便座(ウォシュレット)症候群!?
温水便座・ウォシュレットを使っているのに痔が良くならないと思ってられる方もたくさんいらっしゃると思います。
逆に、使い過ぎるとかえって肛門周囲の皮膚炎を起こしたり、浣腸作用を起こしたりします。
お尻の洗い過ぎには注意しましょう。
少しでも肛門に違和感を感じたらまず専門医にご相談ください。軽い症状の段階でご相談いただければより適切な対処方法を患者さまと一緒に見つけることができます。
体にとって一番負担の少ない方法で、できるだけ日常生活のリズムを変えることなくしっかり治していただくため、 当院では様々な工夫をしています。
一人で悩まずお気軽にご相談ください。
ジオン注射による痔の治療は、肛門の痛みの神経が少ない痔核部分に注射をするため痛みがほとんどないのが特徴です。
また、ジオン注射は決められた講習会を受けて手技を習得した医師しか行えない治療法です。
ジオンという薬は、1970年代に中国で開発された「消痔霊」(硫酸アルミニウムカリウム)という薬をもとに日本で開発されたものです。
■成分・効能
主成分は、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)とタンニン酸で、2005年に厚生労働省から認可を受けた新薬です。
従来の注射療法で使われる薬品に比較し、ジオンは効果が高く痔核の消失率は術後28日で消失という結果が臨床試験で得られています。
■副作用
副作用として報告されているものに血圧低下、吐き気、肛門の違和感、排便困難、一過性にあらわれる発熱があります。
■注意事項
ジオンは、人工透析をしている方、腎臓に障害がある方には投与できません。
前処置や採血が不要なので初診日からジオン治療が可能です。
1回に行うジオン治療は1ヶ所です。
※複数ヶ所を1日で治療した場合、薬の投与量が多くなり、肛門狭窄を起こす危険性があります。
ジオン治療後、安静の必要はありません。
治療後の運動・入浴は可能です。また治療当日のアルコールもOKです。
ジオン治療の翌日に来院いただき、再診が必要です。
1ヶ月に1ヶ所ずつ治療を行います。
4ヶ所に痔がある場合は、大きな痔から順にジオン注射を行い、4ヶ月後に治療が終了します。